「定期的に歯周病の治療を受けると、どのくらい歯がもちますか?」 「この保険外の被せ物を入れると、どのくらいもちますか?」 「もうしばらく来なくても良いのですか?」 「もう大丈夫ですよね?」 歯周病の治療、むし歯の治療ともにこのご質問を受けます。 医療側の答えは、 「分かりません」です。 治療するからには、歯科医師も歯科衛生士もできるだけ長持ちするよう、丁寧に治療をします。 それでも「分かりません」です。 おそらく「どのくらいもちますか?」には、 「治療を受けたのですから、ずっともたせてくださいよ」 が意味合いで含まれていると思います。 (そのようなことをおっしゃる方はいませんが。) そのお気持ち、よく分かります。 自分の時間とお金を使って、わざわざ歯科医院に行き、お口を開けて診察を受けるのですから。 もう一度、言います。 そのお気持ち、よく分かります。 反対の立場だったら、私もそう思うはずです。 その上で申し上げます。 私たちのが相手にしているのは、“目に見えない菌”です。 例えば、セラミックやジルコニア。 これらの保険外の白い被せ物があります。 それを、箱に入れて保存しておけば、「ずっともちます」とお答えできます。 銀歯ですらそうです。 しかし、一旦お口の中に入れると、それは「人工物」から「お身体の一部」になります。 もう人工物ではありません。 唾液が入ります。砂 …続きを読む
2018年7月25日
毎日、一生懸命歯を磨いてもむし歯になる、歯周病になる。 (この方は、毎日一生懸命歯を磨いているので、歯科の受診は必要ないと感じております。意地になっているかもしれません。そのため、何年、何十年と歯科医院に通っておりません。と仮定します。) この方は、それこそ1回30分磨いてそれを3食後きっちり。 休みの日は、もっと時間を使います。 つまり、1日のうち、最低90分を歯みがきに使っています。 手を抜きません。 なぜなら、「自分が頑張れば、歯を守れる」と信じているからです。 しかし残念ながら、それだけでは不十分な場合が多いです。 ・歯は何本もあり、全てを完璧に磨ける人はいません。 特に、奥歯の奥。歯と歯の間。 ・歯の構造を、一般の方はご存知ありません。 歯のどこに溝やくぼみがあり、どこに汚れが溜まりやすいのか? 前歯と奥歯では、全く形が違います。 ・歯ぐきの下の汚れは、歯ブラシでは取りきれません。 ・歯周病の原因である歯石は、歯ブラシでは取れません。 ・大きなむし歯で穴が空いているのに、歯みがきをすれば治ると思っていませんか? ・重度の歯周病も、歯磨きで治ると思っていませんか? ・そもそも、あなたの歯磨きのフォームは正しいのか? 独学の可能性があります。 “磨いている”のと、“磨けている”のとは、違います。 歯間ブラシやフロスを使われていても、その使い方が正し …続きを読む
2018年7月18日
お口の中を切ったわけでも、ぶつけたわけでもないのに、歯ぐきから出血する。 歯を磨いた時に、歯ブラシに血が付いている。 うがいをすると、血が出てくる。 不思議かもしれませんね。 「歯ぐきから血が出る」 そこまで痛くもないし、生活に不自由もない。 むし歯のような“ズキズキ”もない。 放置しがちですが、歯ぐきから血が出るというのはとても悪いサインなのです。 それは歯周病になっている可能性が高いです。 歯周病になると、歯ぐきに炎症を起こします。 歯ぐきには細い血管が走っているため、炎症を起こすとその血管が切れてしまいます。 結果、出血するという仕組みです。 通常、腕や足に切り傷をすると、出血します。 それでも勝手に塞がっていきます。 私たちの意志とは関係なく、身体が治してくれます。 しかし腕や足の切り傷が、もし切れたままだったら??? ずっと出血しますし、切り傷からばい菌が入ります。 ばい菌が入ると、痛いですし、腫れます。 血管を通して、ばい菌が広がりさらなる悪循環です。 (切り傷をした時、かさぶたができいつの間にか治っている。 というのは、とてもありがたい自己修復能力なのです。) 「歯ぐきからいつも出血している」というのは、同じことです。 つまり、「歯ぐきにできた傷口がずっと開いたままになっている」状態なのです。 傷口がずっと開いたままなので、ばい菌は入りたい …続きを読む
2018年7月11日
うどん派?ラーメン派? ではありませんが、歯のトラブルに関するタイプです。 歯を失う原因として、1位が歯周病。2位がむし歯です。 歯周病は、歯はきれいでも歯を支える骨が弱ってしまい、歯がグラグラになって抜歯に至る病気です。 むし歯は、歯自体がボロボロになってしまい、抜かざるを得ない状況です。 いずれも初期のうちに治療をしておけば、抜歯に至ることはありません。 放置し、重度になって初めて「抜歯するかしないか」になります。 さて、この歯周病とむし歯。 タイプに分けられます。 歯周病になりやすいのか(歯周病タイプ)、むし歯になりやすいのか(むし歯タイプ)です。 中には、両方の方もいますが、あまり見かけません。 どちらかが多いです。 むし歯タイプの方は、普段の歯磨き・砂糖の制限・食生活の見直しで予防ができます。 歯周病タイプの方は、残念ながら多いです。 普段の歯磨き・食生活の改善点までは、むし歯タイプの方と変わりありません。 加えて、定期的な歯石の除去、禁煙(減煙)、糖尿病の改善、高血圧の改善、定期的な運動、内服薬の見直し、合いの悪い被せ物のやり替え、歯ぎしり・食いしばりのコントロールなどがあります。 歯周病タイプの方が対策が多いですが、むし歯の対策が簡単なわけではありません。 むし歯で苦労されている方も多いです。 治療 …続きを読む
2018年7月4日
今までは、「奥歯で型を採る治療」となると保険治療では銀歯しか選択肢がありませんでした。 しかし、銀歯は目立ちます。 敬遠されることも少なくないです。 2014年、保険治療において歴史的な転機が訪れました。 「歯科用CADCAMシステムを用いたハイブリッドレジンによる歯冠補綴」が保険治療に組み込まれました!!! キャドカムと呼びます。 ????? 一般の方は、丸っきり意味が分からないと思います。 簡単に言うと、「保険治療で白い歯が手に入る」ということです。 条件があり、何でもかんでも白い歯というわけではないのですが、これまでの方針が大きく変わりました。 すごい時代になったと思います。 CADCAMシステムとは、機械で白いブロックから削りだして歯をつくること。 従来は、歯科技工士さんが手作業でつくっていました。 ハイブリッドとは、「混ぜ合わさったもの」。 ハイブリッド自動車は、ガソリンと電気の両方で動く車。 歯科のハイブリッド冠とは、セラミックス(陶器)とレジン(歯科の治療で使われる樹脂)を混ぜ合わせてつくる被せ物のこと。 歯は親知らずを除くと、前から数えて1番目から7番目まであります。 1~3番は昔から保険治療で白い歯ができました。 2014年の4月から、4、5番目にも保険治療でCADCAM冠を入れられるようになっています。 そして2017年の12月から、下の …続きを読む
2018年6月27日
喫煙と歯周病のことです。 成人の喫煙率は、1965年に厚生省や専売公社が調査を始めました。 それ以降、減少傾向にあります。 2013年に開始された健康日本21では、2022年には喫煙率を12%まで減少させるという目標があります。 しかし、男性だけで言えば今なお30%近くあるそうで、先進国の中でも高いです。 日本という国は不思議な面もあり、治療にはとても意識が高いです。 例えば、 高額な医療費を払って、最善の治療を受ける。 最新の機材がある医院を探し、最新の治療を受ける。 です。 しかし、「予防や病気を発症させない」という前段階への意識は低いように思います。 特に、歯科でそれが顕著に思われます。 喫煙で言うと、周りの大切な人の体にまで悪影響を及ぼします。 さらに、喫煙者で傷ついたDNAは2世代まで受け継がれます。 つまり、あなたのお孫さんまで「癌になりやすい遺伝子」が受け継がれます。 非常に恐いと思いませんか? 副流煙は、主流煙よりも悪いとされています。 喫煙が歯周病の及ぼす悪影響 ①歯周ポケットが深くなる →深くなると、歯周病の菌が入り込みやすくなり、さらに菌を除去しにくくなる ②歯槽骨(歯を支える骨)が吸収されやすくなる(溶けやすくなる) →せっかくの治療も効果が出ず、悪化しやすい ③スケーリングやルートプレーニングといった …続きを読む
2018年6月20日
お口の中は細菌だらけなんです。 大人のお口の中には、なんと300~700種類の細菌が生息しています。 歯をよく磨く人でも1000~2000億個、あまり歯を磨かない人では1兆個もの細菌が住みついています。 そのため、「今、痛くないから」「今、何ともないから」で放置すると。。。 知らないうちに、細菌がどんどん増殖してしまっているかもしれません。 それがいつか爆発して、急に歯ぐきが腫れたり、痛くなったり、出血が止まらなかったり。 「爆発」というのは、例えば風邪をひいたり、体調を崩した時です。 健康な時は、細菌はおとなしいです。 しかし、ご自身の体力や抵抗力が落ちると、「今だ!」と細菌が一気に増殖します。 その結果、急に痛くなったり、腫れたり、につながります。 しばしば「お口の中の菌を0にすることはできますか?」とご質問を受けます。 答えは「できません」です。 例えですが、0にしようと思うと「お口の中をガスバーナーで加熱滅菌する?」ことでしょうか。 そんなことはできません。 人間は菌と共存しています。 腸内細菌がそうですね。 大切なこと 悪い菌を減らすこと 悪い菌を活発にさせないこと です。 0にはできないので、より良い方向に持っていくことです。 より …続きを読む
2018年6月13日
咬む力のコントロールは、とても重要です。 咬む力が異常に強いと、歯周病が悪化します。 例えば、元々歯ぎしり・食いしばりが強い。奥歯が何本も抜けているのを放置、それによって、手前の歯に力がかかりすぎている。 が挙げられます。 力がかかりすぎるとどうなるのか? 歯がかけてしまったり、折れてしまったり。 歯がグラグラしてきてしまったり。 詰め物が欠けてしまったり、外れてしまったり。 顎関節症になってしまったり。 良いことがありません。 最悪は抜歯です。 力をコントロールし、歯を守っていきましょう。 対策を、それぞれの観点から述べます。 ①歯が欠ける・折れる を防ぎたい。 ・「歯ぎしり・食いしばりは寝ている時にしか起こらない」といった意識を変える。 歯ぎしり・食いしばりは、日中でも気付かない内にしていることが往々にしてあります。 何気なく、スマホを見ている時、テレビを見ている時、デスクワークをしているとき、スポーツをしている時。 れっきとした病名もあります(歯列接触癖TCH=Tooth Contacting Habit)。 これは、食事など歯が本来の機能をすべき時以外にも、上下の歯が咬みあってしまっている癖のことです。 ご自身ではなかなか気付きませんが、歯がすり減っていたり、入れた銀歯がツヤツヤにすり減ってい る場合はその可能性があります。 …続きを読む
2018年6月6日
一般の方にはあまり聞きなれないかもしれない「歯科衛生士」。 「歯石のお掃除をしてくれる女性」というイメージでしょうか? 太田貴司個人としては、「歯科医師よりすごいのでは?」と思っています。 歯科医師と歯科衛生士の違いは、「治す」歯科医師と「守る」衛生士です。 歯科医師は、与えられた仕事上、どうしても「減らす」仕事です。 例えば、「削る」「抜く」です。 その患者様のため、その歯のため、を思ってのことですが、「減らす」仕事です。 感謝されますが、「減らした」ものは戻ってくることはありません。 それに対して、歯科衛生士は、「減らさない」仕事です。 歯石の除去をして、歯周病から「守る」。 ブラッシング指導をして、むし歯から「守る」。 現状維持をしようとする仕事です。 歯科衛生士は、歯科医師の仕事のように「何かを変化させる」仕事ではありません。 例えば、歯科医師がむし歯を削って白い詰め物をしてもらう。 これは綺麗になるので、素人目からしても分かりやすいです。 その場で感謝されます。 「治療してもらってありがとうございます。」「きれいな詰め物をしてもらってありがとうございます。」と。 歯科衛生士は、何か大きく変化させる仕事ではありません。 (大きな歯石を取ってもらう以外は。) そのため、感謝されにくい仕事ではあります。 何も変わっておらず、現状維持だからです。 しかし、歯が長持ちするのはどちら …続きを読む
2018年5月30日
「銀歯はどうしたらいいのですか?」 先週の続きです。 「今、すでに入っている銀歯は外した方が良いのですか?」 「痛くなった時に外したら良いのですか?」 「どうしたらいいのですか?」 よく聞かれます。 「今、すでに入っている銀歯は外した方が良いのですか?」への回答(太田貴司個人としての) →①「ご心配であれば外してもいいでしょう」とお伝えしています。 私も含め、歯科医師は銀歯の下のむし歯、その怖さを知っています。 ご心配であれば外しましょう。 外して初めて分かるむし歯も少なくありません。 ②「定期健診で経過を追いましょう」とお伝えすることもあります。 見た目では全く分かりません。 レントゲンを撮影することが重要です。 そのレントゲンを時系列で追っていきます。 ③「今すぐに全部外さなくても良いかもしれません」とお伝えすることもあります。 こうお伝えする方は、よくブラッシングをされていて、生活習慣も整っている方です。 「痛くなった時に外したら良いのですか?」 このご質問も頂きます。 答えは「No」です。 歯以外のお身体もそうですが、痛くなった時は手遅れのこともあります。 痛くなってからでは遅いです。 特に歯は痛くなってからですと、抜歯や抜髄(神経を取る)の可能性があり、痛くなってからでは遅いです。 ぜひ痛くなる前に定期健診を続けましょう。 つまり、いかにも …続きを読む
2018年5月23日