「5歳前後から始めるお子様の歯並び矯正(床矯正)とは?」
滋賀県 守山市 医療法人おおた歯科こども歯科
歯科医師・院長 太田貴司
https://ohta-dent.com/staff.html#intyo
□なぜ歯並びが悪くなってしまったのか?
お生まれになってからの「癖」が原因です。
以前は、先天的要素がほぼ100%と言われていました。つまり、「遺伝」です。
お父さんとお母さんの歯の大きさと顎の大きさが組み合わさって、スペースがないときに歯並びが悪くなる。
というものでした。私が学生時代のときもそのように教わりました。
しかし、現在は後天的要素が大きいと言われています。
つまり、生まれてからの生活習慣です。
頬杖をつく癖、舌を出す癖、ゆびしゃぶり癖、舌の位置、唇を噛む癖。
これらの「癖」が大きいと言われ、それが後述のトレーニングの必要性につながっていきます。
ほかには、20歳前後に生えてくる親知らずも原因です。
□床矯正とは?
取り外しの装置を入れて、歯を動かす矯正治療です。週に2回または3回の頻度で、装置を広げて頂きます。
「広げて頂く」と書いたのは、おおた歯科こども歯科で歯科医師が広げるのではないからです。
お子様ご本人、または保護者様がご自宅で専用の道具で広げて頂く形になります。
広がった装置に合わせて口腔内も広がり、それに合わせて歯が並ぶというものです。
□矯正で歯を並べているとき、歯が痛くなることはある?
ありません。
ゆっくり少しずつ動かしますので、痛くなることはありません。
逆に一気に動かそうとしても、痛いだけで動きません。
歯の神経が死んでしまったり何もメリットはありません。
□「5歳から始める」とは?
それくらいからの年齢から始めると楽だからです。
楽とは?
・犬歯(前から数えて3番目)が生えてくる前に矯正が完了するので、前歯だけで完了できる
・第二次成長期の成長と合わせて歯を並べることができる
・お子様ご本人の自我が芽生える前に矯正が完了できるので、保護者様のやる気だけで矯正ができる
・奥歯が生える前に完了できるので、装置が安定する。装置の交換を最小限にできる(歯並びに合わせて、数個装置を変えることが多いです)
9歳、10歳までに矯正治療が完了できることを目指しています。
逆算すると、5歳から始めることができれば理想です。
※受け口さん(下顎前突)は、4歳からの開始が理想的です。
□「歯並びが悪い」とは?
大まかに分けると、4つパターンがあります。
①上顎前突(じょうがくぜんとつ);いわゆる出っ歯です
②下顎前突(かがくぜんとつ);いわゆる受け口さんです
③叢生(叢生);歯並びがデコボコして並びきっていないものです
④開咬(かいこう);咬み合わせたときに、上の歯と下の歯が咬み合わずに、隙間がある状態です。
⑤過蓋咬合(かがいこうごう):咬み合わせたときに、上の歯が下の歯を全て覆ってしまうくらい噛み込みが強い状態です。
⑥上記の①~⑤が組み合わさったものです。
①~⑤のどれかによって、使う装置・期間・トレーニング方法・治療費・装置の数が変わってきます。
後述しますが、年齢も大きな要素ですね。
□歯並びが悪いとどうなるの?
歯が残る可能性が下がります。
よくある答えが「見た目が悪い」です。
しかし、おおた歯科こども歯科は「見た目のため」に小児矯正をしているわけではありません。
結果的には見た目が良くなるので、保護者様・ご本人様も喜ばれますし、我々も嬉しいです。
しかし、本来は歯を残すためです。
歯並びが悪いと、むし歯や歯周病になりやすく歯を失いがちです。
①上顎前突(じょうがくぜんとつ);いわゆる出っ歯。8020(80歳で20本の歯が残っている)確率:約18%
②下顎前突(かがくぜんとつ);いわゆる受け口。8020(80歳で20本の歯が残っている)確率:0%
③叢生(叢生);歯並びがデコボコして並びきっていない。
④開咬(かいこう);咬み合わせたときに、上の歯と下の歯が咬み合わずに、隙間がある状態。8020(80歳で20本の歯が残っている)確率:0%
⑤過蓋咬合(かがいこうごう):咬み合わせたときに、上の歯が下の歯を全て覆ってしまうくらい噛み込みが強い状態です。8020(80歳で20本の歯が残っている)確率:25%
□矯正前の検査とは?
レントゲン写真、お口の写真、お口の筋力の検査、舌を出してもらった状態での写真、全身写真。
それぞれを多方向から撮影します。
ですので、矯正前の検査は45分~60分のお時間を頂きます。
やや長時間になりますが、数年に渡る矯正の比較のため、欠かせないものです。
検査もせずに矯正をする、ということは
レントゲン撮影もせず、よくも見ずに歯を削るのと同じ感覚です。
□ブラケットの使用について
ブラケットとは、歯の表面(裏面)に金属のポッチのようなものを貼り付けるものです。
通常は、そこにワイヤーを通して歯を並べます。
床矯正は、基本的にブラケットはあまり使いません。
歯を大きく並べるときには使うこともありますが、使う/使わないの指標は、「年齢」です。
ブラケットを使う確率
~9歳 ほぼ0%
~10歳 20%前後
~11歳 30%前後
~12歳 70%前後
と、年齢が上がれば上がるほどブラケットの使用確率は上がります。
ブラケットを使うのは、できれば避けたいところです。床矯正のように取り外しができません。
見た目が良くない/外れる/引っかかる/ものが詰まる/むし歯になりやすい/尖っていると痛い
□矯正が最後までできるか心配
「途中で嫌になって止めてしまった」
たまに聞くことです。
これも年齢やステージによって変わります。
一番多いと考えられるのは、中学校に入学するときに中断になってしまうものです。
部活が始まり、生活習慣が大きく変わり、そのまま矯正を止めてしまうのです。
高校入学や大学受験でも中断になりやすいです。
また、自我が芽生えたときも中断になりやすいです。
※自我が芽生えるとは??
お子様が着る服を「お子様の意志で選んだ」か「保護者様が選んだ」かが指標です。
お子様の意志で着る服を選んでいるようでしたら、自我が芽生えています。
自我が芽生える前だと、保護者様だけの意志で矯正ができます。
自我が芽生えてからの矯正だと、保護者様だけでなくお子様ご本人の強い意志がないと矯正が続きません。
さらに12歳ごろを過ぎると、ご本人だけの意志になるので、さらなる強い意志が必要です。
矯正をするなら、低年齢からというのが非常に重要です。
□早く始める矯正と、大人になってからの矯正の比較
※早く始める矯正
メリット・前歯だけの簡単な矯正で完了できる
・治療費が安価(20万円前後)
・永久歯を抜かない(ここは非常に大きなメリットですね。おおた歯科こども歯科は歯を抜きたくないので、小児矯正をしております)
・正しい顔の成長を促すことができる
・自我が芽生える前なら、保護者様が楽
デメリット・治療期間や治療費が一律ではない(装置を入れている時間や、装置の数によって変化します)
・永久歯の生え方や方向をコントロールできるわけではないので、新たな矯正が必要なことがある
・矯正完了後も、管理が必要であり期間も長い(12歳までは継続通院をして頂き、管理が必要です)
※大人になってからの矯正
メリット・顎の成長が終わっているので、先を読むことができる
・治療計画が立てやすい
・治療費が一律
・治療期間が3年前後
デメリット・治療費が高い(70~100万円)
・永久歯を抜くことが多い(最大のデメリットですね。おおた歯科こども歯科はここを避けたいので、小児矯正をしております)
・骨格を治す場合は、手術が必要
・本人の強いやる気が必要。
「今は忙しいので、もっと大きくなってからの矯正でも良いですか?」
のご質問には上記のメリット・デメリットが参考になるのではないでしょうか?
歯を抜く抜かない/治療費/正しい顔の成長を促せられる
などを考えると、「今しかできない」小児矯正のメリットが多いと感じます。
ヨーロッパでは、小児時期から矯正を始めます。社会保障が整備されています。
なんとドイツでは、子供の矯正治療は健康保険が適応されています。
おおた歯科こども歯科で行っている床矯正は、ドイツでは古くから行わている治療です。
アメリカでは、14歳から17歳から始めます。それは社会保障があまり整備されていないから、と言われています。
□装置だけで治る?
いいえ、おおた歯科こども歯科で行う小児矯正は装置だけでは治りません。
多少の変化はあるかもしれません。ですが、後戻りします。
小児矯正をするのでしたら、装置に加えてトレーニングも必要です。
トレーニングは、どの歯並びを治すかによって変わります。
□装置はどうやってつくるの?
上と下の型を採って作製します。
ですので、そこはお子様に頑張って頂くことになります。
取り外しの装置ですが、既製品ではありませんので技工士にお願いして作製してもらいます。
□まとめ
「5歳前後から始める床矯正とは?」
①取り外しの装置で歯並びを改善する矯正
②歯を抜かずに矯正ができる
③装置だけでなく、トレーニングも必要
④歯並びの改善後も、通院していただき管理をしていくもの
⑤矯正をすることは、見た目だけでなく歯の寿命を伸ばすこともできる
これからも通院してくださるお子様に対して、
歯を抜かずに歯並びを改善できるよう尽力していきます。
おおた歯科こども歯科 院長 太田貴司
(自己紹介)https://ohta-dent.com/staff.html#intyo
2022年1月1日