滋賀県守山市古高町にある歯医者、おおた歯科こども歯科の院長 歯科医師の太田貴司です。
今回は、むし歯ができるまでお口の中でどのようなことが起こっているのかについてお話します。むし歯は、ある日突然痛くなるわけではありません。毎日の汚れの積み重ねが、徐々にむし歯を生じさせるのです。
- むし歯の3つの原因
むし歯には大きく分けて3つの原因があります。それは「むし歯原因菌」、「砂糖」、「歯の質」です。この3つが重なり時間が経過すると、むし歯ができてしまいます。
・むし歯原因菌
お口の中には様々な細菌がいますが、その中でもむし歯の原因菌として挙げられる代表的な細菌がミュータンス菌です。ミュータンス菌が産生する酸は、歯の表面のエナメル質の成分であるカルシウムやリンを溶かして脱灰させる性質をもちます。
・食べ物や飲み物に含まれる砂糖
食べ物や飲み物に含まれる砂糖の中でも、特にショ糖はミュータンス菌が酸を酸性するときに餌にします。
・歯の質
エナメル質や象牙質のむし歯へのなりやすさには個人差があります。例えば、子どもの乳歯はエナメル質がまだ柔らかいため、むし歯になると一気に進行してしまうような性質があります。
- むし歯ができる仕組み
- ミュータンス菌は食べ物や飲み物に含まれる砂糖を分解してプラークを作り出し、その中に棲みつきます。プラークは粘着性があるので歯の表面に定着し、酸を産生します。
- 酸が産生されることにより、歯の表面のエナメル質やお口の中の唾液のpH(酸性度)が下がります。pHが下がると、歯の表面のエナメル質に含まれるカルシウムイオンやリン酸イオンが溶け出して脱灰とよばれる現象が起きます。
- 脱灰によりエナメル質の表面は粗造になり、一定の限度を超えると穴になります。これが、むし歯です。
通常であれば、脱灰が生じたとしても唾液がもともと持っている緩衝作用(下がったpHをもとに戻そうとする働き)によりエナメル質は再石灰化します。再石灰化すれば、溶けたエナメル質は元通りになります。しかし、そのバランスが崩れ、脱灰が再石灰化を上回るようになると再石灰化が追いつかずにむし歯になってしまうのです。
- むし歯になりやすい人とは
食べたり飲んだりするとお口の中のpHが下がります。本来は唾液の緩衝作用によりお口のpHは元に戻ろうとしますが、戻る前にまた食べたり飲んだりしてしまうと常にpHが低い状態が続いてしまうのです。pHが低い、つまり酸性の状態が長く続くことで、むし歯になりやすい時間が長くなってしまいます。したがって、だらだらと食べたり一日に何回も間食をするようなことがあると、むし歯になりやすくなります。
また、一見同じような生活を送っているにも関わらずむし歯になりやすい人、なりにくい人がいるのは、むし歯原因菌の数や唾液の質、歯の質などに左右されるからです。
したがって、むし歯を予防するためには毎日の丁寧な歯磨きでプラークを除去するとともにむし歯原因菌の活動を抑制することや、フッ素塗布などで歯の質を強化することが大切なのです。
今回は、むし歯ができる仕組みやむし歯になりやすい人なりにくい人の違いについてお話させていただきました。
少しでも皆様のお役に立てたら幸いです。
おおた歯科こども歯科 院長 太田貴司
(自己紹介)https://ohta-dent.com/staff.html#intyo
2023年5月1日