滋賀県守山市古高町にある歯医者、おおた歯科こども歯科の院長 歯科医師の太田貴司です。
予防・痛くなる前の治療・歯周病の治療に力を入れています。
よく歯科医院は啓蒙として「歯の神経をとってはいけない。神経を取ると寿命が短くなったり、弱くなったりします。最後は抜歯になってしまう。」という話が出てきます。
今回は、「歯の神経を抜くと、なぜ歯が弱くなるのか?」についてお伝えします。
目次
1.神経を抜くとは?
2.神経を抜くと歯が弱くなる理由
栄養供給がなくなる
もろくなり割れやすくなる
むし歯になっても気づきにくい
3.治療:被せ物(クラウン)で補強する
4.定期的なメンテナンスの重要性
噛み合わせの調整の重要性
5.まとめ
1. 歯の神経を抜くとは?
歯の神経を抜くことを「抜髄(ばつずい)」と言います。
抜髄とは、歯の内部にある「歯髄(しずい)」という組織を取り除く治療です。
歯髄には神経や血管が含まれ、歯に栄養を供給し、痛みを感じる役割を持っています。この組織を丸ごと取り除く治療を指します。
イメージとして、腕の一番外側は皮膚です。その下に脂肪や血管・神経があります。
神経を抜くとは、腕の中にある神経と血管を取り除いてしまうイメージです。
2. 神経を抜くと歯が弱くなる理由
(1)栄養供給がなくなる
神経を抜くことで歯に血液が供給されなくなり、栄養が届かなくなります。
その結果、歯が乾燥し、弾力を失い、もろくなりやすくなります。
(2)もろくなり割れやすくなる
神経がある歯に比べて、神経を抜いた歯は内部が弱くなります。
そのため、噛む力に耐えられず、ひび割れや破折(はせつ)が起こりやすくなります。
腕や足の骨が折れてしまうイメージです。
腕や足の骨が折れても、治療や固定で多くが治ります。
しかし、歯はそうはいきません。歯が折れると、ほとんどが抜歯にいたります。
特に奥歯は強い力がかかるため、注意が必要です。
(3)むし歯になっても気づきにくい
神経を抜くと、痛みを感じる神経がなくなるため、むし歯が進行しても気づきにくくなります。
そのため、気づいたときにはすでに重度のむし歯になっていることがあります。
特に神経がない被せの下でむし歯になると、早期の発見はほぼ無理であると考えます。
3. 治療:クラウンで補強する
被せ物(クラウン)で補強する重要性
神経を抜いた歯はもろくなりやすいため、被せ物(クラウン)を装着して保護することが重要です。
特に奥歯は力がかかりやすいので、クラウンで補強することで破折を防げます。
クラウンにするには、正直に申し上げると、歯を削る量は増えます。
しかし、将来的に見るとクラウンにした方が良いと感じています。
「削る量を最小限に」を最重要視して、無理やりクラウンを避けても、良いことはありません。
どうなるかと言うと、破折してしまうのです。
先ほど申した、歯が腕の骨折のように割れてしまい、そのまま抜歯になってしまう症例を何本も見てきました。
(たくさん歯が残っていて、かみ合わせが強くない前歯については例外ではありません)
太田貴司は、基本的に小臼歯・大臼歯(前から数えて4番目以降の歯)が抜髄になってしまった場合は、クラウンにすることが多いです。
※保険のCADCAMクラウンのデメリット
「被せ物を保険ですると銀歯」というイメージがあるかもしれません。
実は、保険でも白い被せ物は可能です。
しかし、大きなデメリットがあります。
それは「歯を大きく削る必要がある」ことです。
保険の白い歯(CADCAMクラウン)は、割れやすいため厚みを多くとる必要があります。そのため、土台の歯を大きく削る必要があるのです。
「保険で白い歯」というのは大きなメリットです。しかし、そこにはデメリットも隠れているのです。
4.定期的なメンテナンスの重要性
神経を抜いた歯は、再感染(治療してもばい菌が侵入してしまうこと)や破損のリスクが高いため、定期的な歯科検診が必要です。
クリーニングや噛み合わせのチェックを行い、トラブルを未然に防ぎましょう。
噛み合わせの調整も重要です。神経を抜いた歯が適切に機能するためには、噛み合わせの調整が重要です。
噛み合わせが悪いと、無理な力が加わり、歯が割れやすくなります。
5. まとめ
歯の神経を抜くと、痛みはなくなりますが、歯がもろくなり、むし歯や破折のリスクが高まります。
そのため、被せ物で補強し、定期的なメンテナンスを行うことが大切です。
歯の健康を守るためにも、違和感を感じたら早めに歯科医院を受診しましょう。
おおた歯科こども歯科院長 太田貴司
(自己紹介)https://ohta-dent.com/staff.html#intyo
2025年9月22日