滋賀県守山市古高町にある歯医者、おおた歯科こども歯科の院長、歯科医師の太田貴司です。
予防・痛くなる前の治療・歯周病の治療に力を入れています。
今回は、フッ素を塗ることは全世代に効果的か?についてお伝えします。
フッ素塗布と聞くと、子どものむし歯予防を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、成人や高齢者にとっても、フッ素塗布は効果的なむし歯の予防策なのです。
成人や高齢者における、フッ素塗布の効果やその重要性について詳しくご説明いたします。
目次
- フッ素の基本的な効果
- 成人や高齢者におけるむし歯のリスク
- 成人や高齢者へのフッ素塗布の効果
- フッ素塗布の安全性と注意点
- まとめ
1. フッ素の基本的な効果
フッ素には、以下のような効果があります。
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歯質の強化:フッ素は歯のエナメル質(歯の表面を覆う硬い層)と結びつき、フルオロアパタイトという強い構造をつくります。これにより、歯がむし歯菌に対する抵抗力を高めます。
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再石灰化の促進:お口の中は、食事やお菓子で酸性になりむし歯になりやすくなります。この酸性になった口腔内では、歯からミネラルが溶け出す脱灰が起こります。脱灰が続くと歯が溶けてしまいます。 フッ素は、唾液中のカルシウムやリンとともに、溶け出した部分を修復する再石灰化を促進します。
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むし歯菌の抑制:フッ素は、むし歯の原因菌であるミュータンス菌の酸産生を抑制し、菌の活動を弱めます。フッ素はなんと、むし歯菌に直接働きかけてくれるのです。歯に働きかけるだけではないのです。
2. 成人や高齢者におけるむし歯のリスク
年齢を重ねると、以下のような理由でむし歯のリスクが高まります。
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歯肉の退縮:年を重ねたり、歯周病により歯肉(歯ぐき)が下がると、歯の根面(歯の根の部分)が露出します。根面は、エナメル質よりも軟らかい象牙質(ぞうげしつ)で覆われており、むし歯になりやすい部分です。
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唾液分泌の減少:加齢や薬の副作用で唾液の分泌が減少すると、口腔内の自浄作用が低下し、むし歯のリスクが増加します。
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口腔ケアの難しさ:ご高齢になると、手先の器用さや認知機能の低下により、適切な歯磨きが難しくなることがあります。今までと同じように磨いているつもりでも磨けなくなっているのです。
3. 成人や高齢者へのフッ素塗布の効果
成人やご高齢の方にフッ素塗布を行うことで、以下の効果が期待できます。
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根面むし歯の予防:露出した根面にフッ素を塗布することで、歯質を強化し、むし歯の発生を抑制します。
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むし歯の進行抑制:初期のむし歯であれば、フッ素の再石灰化促進効果により、進行を止めたり、改善したりすることが可能です。
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口腔内環境の改善:フッ素の抗菌作用により、むし歯菌の活動を抑え、口腔内の健康を維持します。
4. フッ素塗布の安全性と注意点
フッ素塗布は適切に行えば安全性が高いとされています。特に歯科医院でのプロフェッショナルケアとして行うフッ素塗布は、効果的で安全です。ただし、過剰摂取は避けるべきですので、歯科医師の指導のもとで適切な頻度と量を守ることが重要です。
1回に、チューブ丸々1本使うとさすがに危険ですが、それだけ使う方はいらっしゃらないと思います。
5. まとめ
フッ素塗布は、子どもだけでなく、成人や高齢者の患者さまにとっても、むし歯予防や歯質強化に効果的な方法です。
特に、歯肉の退縮や唾液分泌の減少など、年齢とともに増加するむし歯リスクに対して、フッ素塗布は有効な対策となります。定期的な歯科検診と併せて、フッ素塗布を検討されてはいかがでしょうか。
またフッ素塗布には限界があります。象牙質深くに進んでしまったむし歯や、すでに痛みが出ているむし歯には効果がありません。
積極的に治療をしてもらった方が良いでしょう。
2025年6月30日