滋賀県守山市の歯医者、おおた歯科こども歯科の院長太田貴司です。
“歯が溶ける”と聞くと、“むし歯によって歯に穴が開く”と連想される方が多いと思います。
しかし、ここでの“歯が溶ける”は「酸蝕症」による症状。むし歯とは、全く別の症状です。
酸蝕症とは、酸の影響で歯が溶けてしまう症状のことを言います。
酸蝕症にかかると、たとえ日頃しっかりと歯磨きをしていても歯が溶けてしまい、「歯がしみる」「歯が痛い」という異常につながってしまいます。
原因としては、以下のことが挙げられます。
外側からのもの
①飲食物由来:炭酸飲料の摂り過ぎ、柑橘類の摂り過ぎ、酢の摂り過ぎ
②酸性の飲み薬:鉄剤、アスピリン、アスコルビン酸
③職場や今いる環境で酸が多い
④プールで泳ぐときに水中で頻繁に口を開けている
身体の内側からのもの
①頻繁な嘔吐
・消化器の潰瘍、胃液の逆流
・糖尿病、腎不全、甲状腺機能亢進症、アジソン病
・偏頭痛、メニエール病、脳腫瘍
・薬の副作用:モルヒネ、ドーパミン作用薬、ジギタリス製剤、抗がん剤、アスピリン、アルコール
・心因性の嘔吐
・摂食障害:過食性、拒食症
・アルコール依存症
・つわり
②ヘルニア
③唾液が少ない
原因が外側からのものなのか、内側からのものなのかは、症状が出る場所で見分けることができます。
外側からの原因によるものは歯の外側が溶け、対して内側からの原因によるものは歯の裏側が溶けます。
それでは、これらの原因に対してどのように対処すればよいかを見ていきましょう。
治療と予防方法
①酸を避ける(特に就寝前)→採るなら素早く飲む、お口の中に溜めない、温度を下げ過ぎない
②内科的疾患を治療する
③歯を強くする→フッ素の塗布
④酸を取り入れた後すぐに歯みがきはしない
⑤拒食症、過食症、アルコール依存症がある→内科や精神科を受診する
⑥柔らかい歯ブラシを使う
⑦歯磨きの力を弱くする
⑧歯が薄い部分・欠けてしまった部分はコンポジットレジンで詰める
⑨インレーの合いが悪い部分はインレーを作り直す
⑩痛みが強い場合は抜髄をする
⑪マウスピースを作製してこれ以上歯がすり減らないようにする
⑫唾液が少ない場合
・ストレスを軽減する
・水分補給をしっかりとする
・カフェインを減らす(コーヒー、お茶、コーラ、清涼飲料水など)
・糖尿病を治療する
・唾液腺の疾患がある場合は治療をする(シェーグレン症候群)
・腎不全を治療する
・アルコール依存症を治療する
・全身エリテマトーデス、関節リウマチ、サルコイドーシスを治療する
・薬の副作用を改善する(減量や薬の変更)
向精神薬、抗うつ薬、精神安定剤、鎮痛剤
抗利尿薬、血圧を下げる薬
抗ヒスタミン薬、気管支の薬、去痰薬
抗痙攣薬、抗不整脈薬
制嘔吐薬
一見無関係に思えることが、皆さんの歯の健康・不健康につながっているのですね。
紹介したように酸蝕症の原因は多岐に渡りますが、実際はその多くが炭酸飲料と柑橘類の多量摂取によるものです。
せっかく歯みがきをしっかりされていても、歯が溶けてしまうのは非常にもったいないです。
嗜好品の量をコントロールして、大切な歯を守っていきましょう。
2018年9月15日