「歯を抜かないといけません」
歯科医院で言われたくない言葉ですよね。
実は、言う方も嫌なのですよ。
なぜなら、良い反応があるわけがないからです。
「歯を抜かなければいけません」とお伝えして、
「ありがとうございます。嬉しいです。」なんて言われるわけがないからです。
みなさん、顔が曇ったり、「え?」と言われたり、「嫌です」なんて言われることもあります。
それはそうですよね。
歯を残すために通院するわけですから。
こちらも言いたくないフレーズの一つなのですよ。
我々も歯を残すために歯科医師をやっているわけですので。
でも、それを乗り越えないといけない時がある。
抜かないといけない時がある。
その患者様のため、その歯のため、隣の歯のため、今後の治療方針のため。
抜歯をお伝えして、歯を抜いてもらうか、抜かずに経過観察かはお任せですが。
【歯を抜かなければいけないとき、抜いた方がいいとき】
①横向きに親知らずが生えていて、手前の歯に悪さをしているとき
手前の歯(第二大臼歯)にすでにむし歯・歯周病がある。
今後、親知らず・第二大臼歯ともにむし歯・歯周病のリスクが高い。
親知らずを抜かないと、第二大臼歯の治療がきちんとできない場合。
親知らずが押して、歯並びがデコボコしている(→この場合、親知らずを抜いても歯並びが元に戻ることはありません)
②むし歯でボロボロになっている
歯の頭がむし歯でなくなってしまっている(残根、C4)で、むし歯を取り除くと歯がなくなってしまう場合。
そこに差し歯を入れても、咬む力に耐えきれない場合。
奥歯に残根状態、化膿していなければそのまま経過観察をされる方もいらっしゃいます。
最近は、ファイバーポストコアで残すことができるケースも出てきています。
③いくら根の治療をしても、化膿が治らない
ばい菌を取り除くことができない。
このままでは隣の歯にも悪影響がある場合です。
④歯が折れている。
腕の骨折や足の骨折のように、歯自体が折れている場合。
折れているため、差し歯を入れても外れてしまいますし、折れた部分から化膿してしまいます。
以前は100%抜歯でしたが、最近は残す技術も出てきています。
⑤歯周病で歯がグラグラ
咬むたびに痛い。
頻繁に歯ぐきが腫れている。
⑥矯正のため
矯正専門医から、抜歯をお願いされる時があります。
今後の治療方針のためですね。
冒頭にも述べましたが、私を含め、歯科医師は歯を抜くために歯科医師になったわけではありません。
「歯を残したい」志しがあるのです。
しかし、現実はどうしても抜歯をせざるを得ない場面に遭遇してしまいます。
2018年5月2日