滋賀県守山市の歯医者、おおた歯科こども歯科の院長太田貴司です。
歯科医院での痛み止め、と言えば「ロキソニン」です。
痛い時、抜歯の後や、腫れてしまったとき、出された記憶のある方も多いと思います。
いつから使われているかは存じませんが、何の疑いもなく処方されています。
第一選択であり、効果もあるためです。
そして私たちも当たり前のように処方されてきたため、なんの疑問もいだいてきませんでした。
しかし、何でもかんでも「ロキソニン」というのは、どうやら問題があるようです。
ロキソニンは、鎮痛作用はしっかりあり、効き目もあります。
ところがその反面、副作用も多いのが難点です。
ご年配はさらに注意しなくてはいけません。
どのような副作用なのか、具体的に見てみましょう。
【ロキソニン錠の注意点】
・血液をサラサラにする薬とロキソニン錠を併用すると、出血が止まりにくくなる。
・腹痛、胃部不快感
・食欲不振
・悪心嘔吐、下痢
・消化性潰瘍
・便秘
・胸やけ
・口内炎
「そういえば…」なんて思い当たる方も多いのではないでしょうか。
ちょっと我慢できる程度の副作用であれば辛抱することもできますが、「出血が止まりにくくなる」なんて想像しただけでも怖い感じがしますね。
よく効く、ことは良いことばかりとも限りません。
他の分野でも「とにかく一番強いもの」を持っていると人は安心するところがあります。
例えるなら、ジュース一本冷やすのに、店舗に置くような業務用冷蔵庫は必要でしょうか?
冷蔵庫なら場所と電気代の損失だけで済みますが、人の体の場合ですと、必要以上のものを取り入れて大切な健康を損なうことにもなりかねません。
「痛い」から飲んだロキソニンでさらに体調を崩してしまった。
医院側もよかれと思って出したロキソニンで、ご迷惑をおかけしてしまったなんてことは、できれば避けたいところです。
そう考えたとき、副作用が少なく(これは痛み止めだけではありません。お薬には少なからず副作用はあります。表面上に出ないことが多いだけで、副作用のないお薬はありません。)、なおかつ効き目もある痛み止めがあれば良いですよね。
ではどうしたらよいのでしょうか。
現在、海外ではロキソニンの使用頻度は下がりつつあります。
代わりに、アセトアミノフェン(商品名カロナール錠)が主流となりつつあるようです。
カロナール錠、と言われれば、こちらも聞いたことのある方も多いと思います。
特にお子さんのいらっしゃる方は耳にする機会も多いのではないでしょうか。
ロキソニン錠に比べ、カロナール錠は副作用が少ない痛み止めです。
ロキソニン錠に比べると若干その効果は落ちますが、カロナール錠も使い方を工夫すれば、ロキソニンのような効果が得られます。
その工夫というのは、痛みが出そうな治療の前にあらかじめカロナール錠を飲んで頂く使い方です。
例えば‥‥
・抜歯をする1時間前にカロナール錠を飲む
・麻酔をして、抜歯直前にカロナール錠を飲む
・神経の治療をして、麻酔が切れる前に痛み止めを飲む
この飲み方を「先制鎮痛」と呼びます。
文字通り、あらかじめ痛みを抑えるということです。
馴染みのない方は「痛む前に痛み止め?!」と思われるかもしれませんが、痛むことがあらかじめわかっているものに対し、対策を立てて臨む、というのは実に建設的な方法なのです。
痛む前にお薬を飲むことに対し、お薬のお値段を気にする方もいらっしゃいますが、1錠は約10円です。そう聞くと全然気にならないのではないでしょうか?
1回に飲んで頂く錠数は、ロキソニン錠より多くなります。
それは、ロキソニン錠よりも安全だからです。
そして、カロナール錠は痛みの程度によって錠数をコントロールすることができます。
カロナール錠は1錠当たりの容量も種類があるため(200mg、300mg、500mg)、錠数だけでなくさらに細かく調整することができます。
手術の当日の痛みと一週間後の痛みの違い、成人の中でも年齢や体格の違い、ひどく痛む人、軽度で済む人といった違いに対し、錠数と容量で使い分けできることというのは、とても多くの人に適しているといえるのです。
日本ではまだまだ「カロナール錠と言えば、小児用」というイメージがありますが、実際は、成人用としてもあり十分に対応ができます。
カロナール錠もお薬です。
副作用がないわけではありませんが、「なんだか弱そう」という面ばかりいままで着目されてきてしまいましたが、これからはその汎用性の高さに注目が集まり、日本でもカロナール錠が主流になるのかもしれません。
2018年9月22日